阿久沢家住宅は17世紀末ごろにつくられた民家です。平屋建てで、開口部が少なく、間取りも非常に単純なつくりとなっています。屋根は茅葺ですが、棟じまいに特徴が見られます。土で棟を押さえ、そこに芝やイチハツ、イワヒバなどを植えます。5月頃にはイチハツが青く美しい花を咲かせ、訪れる人の目を楽しませてくれます。
入口を入ってすぐの場所が「どま」です。板などを敷かず、土をたたき締めています。建物の半分近くを占める「どま」には、耕作に使う道具を置いたり、雨天時の室内作業などに使われました。本住宅の特徴的としては、「袖摺柱」と呼ばれる柱が立てられる点で、建築技術の発展過程を見ることができます。
「どま」に面して板敷きの「ひろま」には「いろり」が置かれ、家族の団らんスペースとして家の中心となりました。奥には台所である「かって」が置かれ、「かまど」で火を焚いて調理を行いました。「ひろま」への上り口は「あがりはな」と呼ばれ、簡易な応接スペースとして使われました。
住宅の中心に立つ大黒柱は、「鉋」のほかに「手斧」と呼ばれる道具が仕上げに使われています。
鉋仕上げの面はつるっとしていますが、手斧仕上げの面はうろこ状になっており、本住宅の長い歴史を物語っています。
「おく」は家族の寝室で、出産などにも使われる大切な部屋です。このため出入口以外は土壁で仕切られ、密閉されたスペースとなっています。「こざ」はお客様のための部屋で、この部屋のみ天井がはられ、床には畳が敷かれています。平成26年度の屋根葺替工事の際、「こざ」の天井裏で昭和の改修工事の際に置かれた神棚が見つかりました。