現在休館中の展示施設なども、6月に入ると順次開館する予定です。「おうちでミュージアム」第6回は「天狗岩堰用水(てんぐいわぜきようすい)」についてです。
「天狗岩堰用水」は、利根川から取水して、前橋市から佐波郡玉村町にいたる用水路で、総延長は22.2kmに及びます。この用水路の開削は遠く江戸時代にさかのぼります。総社藩主となった秋元長朝(あきもとながとも)は、石高の増加には用水路の開削が不可欠と考え、周辺の大名との交渉や領民の税の免除などを行って、大規模な土木工事を推し進めました。開削には天狗の力を借りたという伝承から、その名が付けられました。
開削当時の様子を記した資料が残されていないため、どのように工事を行っていたのかは明らかでありません。ただ、後世に書かれた記録には、「丁間稲荷」という神社を測量の起点にしていたと記され、広く水がいきわたるよう位置や高低差をきちんと測りながら開削を進めていたことが想定されます。また、秋元長朝が「越中枠(えっちゅうわく)」という自動調節機能を持った水門を考案して、増水時に水門口を守ったとの記録があります。
江戸時代後期、幕府の命により庄内藩が印旛沼(千葉県)の開削にあたった際の様子を記録した『続保定記(しょくほていき)』(山形県指定文化財)には、当時の通達や人々の様子をはじめ、鍬(くわ)や鋤(すき)、斧(おの)、鎌(かま)など堀の開削工事に使った道具が、絵図を用いて描かれています。本資料を見ると、天狗岩用水の開削から200年以上たったころでも、開削の用具は田んぼや畑の耕作などに使った農具が中心だったことが分かります。
『続保定記』(山形県HP「山形の宝」より転載)
領主と領民が力を合わせ、3年に及ぶ大土木工事を行った結果、流域の広い地域に豊かな実りをもたらし、現在までその恩恵が続いています。この開削工事の様子を表情豊かに描いたジオラマが、総社歴史資料館に展示されています。また、「もっこ」や「たこ」といった昔の道具が体験できる展示もあります。スマートフォンに『総社資料館ナビ』をダウンロードすると、ジオラマをさらに楽しめますよ♪
ぜひ一度足を運んで、往時に思いをはせてみてはいかがでしょうか?