市教育委員会では、前橋市都市計画事業元総社蒼海土地区画整理事業に伴う発掘調査を、26年にわたって行っています。
令和7年度は、6地点で調査を予定しています。
今回は、調査区3区の調査状況を報告します。
【遺跡の情報】
遺跡名:元総社蒼海遺跡群(153)3区
調査場所:前橋市元総社町地内
調査予定面積:124㎡
調査期間:令和7年7月31日~9月2日
「発掘風景」
今回の調査区では、堀の跡が検出されたため、深く掘り下げました。土が乾くと壁が崩れてしまうため、調査をしていない間はシートで覆います。また、調査区の縁は、土のうで補強しています。
今回の調査区は、もともと沼地だった標高の低い土地にあるため、掘り進めると水が湧いてきます。溜まった水を少しずつバケツで汲み出しながら発掘を行いました。
「全景(左が北)」
【溝】
今回の調査では、計3条の大規模な溝が確認されました。
蒼海城の堀と考えられる大きな溝(W-3)に重なって、W-1、W-2が見つかりました。W-3のラインを壊して掘られていることから、W-1とW-2は後から掘られた溝であると分かります。
「W-3の様子」
地山(人の手が加わっていない土の層のこと。今回は総社砂層)まで掘り下げた状態のW-3です。北東(画像左手奥)から南西(画像右手手前)にかけて掘られ、南側の立ち上がりは確認されました。また、安全を考慮し段状に掘っていますが、本来は角度をもって立ち上がります。 この溝は、左手の壁の方向へさらに深く続きますが、溝の底を確認しようと一部(画像左の水が溜まっている場所)を深く掘ってみたところ、水が湧いてしまったため、安全を考慮して中止しました。なお、北側の壁を掘り進めると、溝の反対側の立ち上がり部分が見つかる可能性がありますが、調査区外のため、残念ながら確認することができませんでした。
【出土遺物】
出土遺物は少量でしたが、溝が機能していた当時の人々が使っていたと考えられる石臼の破片などが出土しました。
「石臼」
【まとめ】
中世の元総社町には蒼海城という城があり、幾重もの水堀に囲まれているさまが、まるで海に浮かんでいるように見えたことから、その名がついたと言われています。廃城になった後から現在に至るまで、旧道などに堀の痕跡は残されていましたが、土地区画整理事業の進捗につれ、目にできる遺構がほとんど残っておらず、その全貌は絵図や古地図、歴史資料などからわずかにうかがい知るのみとなっています。
元総社蒼海遺跡群発掘調査では、これまでもたくさんの蒼海城の堀が見つかっています。様々な地点での調査を重ねていくことで、かつての蒼海城のすがたを明らかにすることができると考えられます。
9月29日現在、4区の調査に着手しています。
次回の報告をお楽しみに!