文化財保護課では、市内各地で遺跡の発掘調査を行っています。
今回は「令和6年度上野国府等範囲内容確認調査」から、8月の調査状況をご紹介します。
【調査の概要】
遺跡名:推定上野国府跡
調査場所:前橋市元総社町地内
調査予定面積:640㎡
調査予定期間:令和6年6月10日~同年12月下旬
調査原因:範囲内容確認調査
主な時代:古代、中世
文化財保護課では、「上野国府」(現在の群馬県庁に相当する古代の役所)があったと推定されている前橋市元総社町で、その実態解明のための発掘調査を継続的に実施しています。
昨年度に引き続き今年度も、古代の役所に関連すると考えられる建物跡が多数見つかっている元総社町の宮鍋神社(みやなべじんじゃ)周辺で発掘調査を実施しています。
6月の調査状況は こちら
7月の調査状況は こちら
【8月の調査状況】
6~7月に調査した87トレンチは、8月7日に埋戻しを行い、調査を完了しました。87トレンチでは残念ながら目的としている古代の役所関連の遺構は確認できませんでしたが、最終的に、古墳時代の竪穴建物跡3軒、平安時代の竪穴建物跡2軒、蒼海城の堀跡1条のほか、井戸跡・土坑・ピットなどを検出しました。
8月は、宮鍋神社の北西100mほどの地点に設定した調査区(89トレンチ)の表土掘削と遺構確認を中心に調査を行いました。周辺は、比較的発掘調査が行われていない場所であり、古代の土地利用の状況や地形確認を目的としています。
8月5日と6日に、重機による掘削を行い、50~80cmほど堆積していた表土を除去した後、遺構確認を開始しました。遺構確認は、鋤簾(じょれん)という道具を使って新鮮な土を削り出し、土の色や混入物の違いを確認しながら行います。
その結果、調査区の東端付近に、1108(天仁元)年に浅間山が噴火した際に噴出した浅間B軽石が堆積していることが分かりました。確認できた浅間B軽石は、灰色や青灰色の砂利のような軽石のほか、あずき色の火山灰が層状に堆積していました。このような堆積の仕方は、軽石が降下したときのままの状態であることを示しています。
元総社地区周辺では、浅間B軽石は中世以降の耕作土などに鋤き込まれた状態で確認されることがほとんどで、降下したときのままの状態で確認されるのは、噴火当時、溝などの遺構があって窪地だった場所や地形的に低かった場所に限られます。
89トレンチで浅間B軽石が確認された場所に遺構があるのかどうかは、現在確認中です。その結果を含め、89トレンチの詳しい状況については、次回以降お知らせします。
87トレンチの全景(北から撮影)
89トレンチの意向確認の様子(東から撮影)
89トレンチ東端付近に堆積していた浅間B軽石。灰色~黒色の部分が軽石。その上の白っぽく見える部分が火山灰(実際はピンク色~あずき色に近い色をしています。)